9月26日(土)の土曜ランチワイン会は、
第105回 「オーストリアの固有品種グリューナー・ヴェルトリーナーを掘る」というテーマで開催しました。
オーストリアの白の固有品種と言えばグリューナー。オーストリア国民もデイリーワインとしてこよなく愛する品種でもあります。しかし、その歴史や品種特性について触れられる機会が少ないかと思います。そこでこの機会にオーストリアを代表する白品種の魅力を掘り下げてみました。
当日は下記のワインをお出しいたしました。
写真左より、
- Gruber Klassik Grüner Veltliner 2019 ニーダーエスタライヒ州 ヴァインフィアテルDAC
- Rabl Grüner Veltliner Ried Dechant Alte Reben 2017 ニーダーエスタライヒ州 カンプタールDAC
- Sepp Moser Grüner Veltliner Fundamental 2018 ニーダーエスタライヒ州 クレムスタールDAC
- Fritsch Grüner Veltliner Wagram Classic 2017 ニーダーエスタライヒ州 ヴァーグラム
- Machherndl Gruner Veltliner Ried Kollmütz Federspiel 2018 ニーダーエスタライヒ州 ヴァッハウDAC
グリューナー・ヴェルトリーナーはオーストリアの地場品種として世界的にその名を轟かせています。
アメリカではグリーンワイン(緑のワイン:グリューナーが「緑の」という意味なので)として知られており、カリフォルニアでも栽培されています。
しかし、それをオーストリアの産地ごとに飲み比べる機会は少ないかと思います。
この会では、グリューナー・ヴェルトリーナーを代表するオーストリアの産地のものを飲み比べ、それぞれの産地の特性、そして、品種の個性を掘り下げました。
ヴァインフィアテルはオーストリアの北に位置する産地で、オーストリア国民の飲むワインのほとんどを生産している地域です。
この地区で造られるグリューナーはソムリエ教本にもグリューナーの味として書かれている「白コショウ」のような風味が感じられます。
柑橘のフレッシュな風味と白コショウのようなスパイシーなニュアンス、そして、高い酸味が特徴です。
グリューバー(Gruber)はその典型的な風味をよく表現しており、テロワールを感じられる素晴らしいワインでした。
カンプタールはドナウ川の支流であるカンプ川の渓谷で、グリューナーの名産地の一つです。
ラブル(Rabl)はカンプタールを代表する造り手の一つで、その単一畑のワインをお出ししました。
凝縮感、複雑味がずば抜けており、レス土壌に由来する軽くて華やかなミネラル感が特徴のワインです。
そして、セップ・モーザーの醸し系のワインであるファンダメンタルもお出ししました。
セップ・モーザーはドナウ川支流のクレムス川の渓谷であるクレムスタールにワイナリーを構え、代々ワイン造りを行っています。
その中でもこのワイン少し特殊で、ステンレススチールタンクを用いて、無濾過、清澄なし、亜硫酸塩無添加の自然派のワインです。
色合いも濁っていますが、その分、うま味がそがれることなく、酸味、果実味、うま味とその3つが三位一体となっており、江戸前鮓の味わいに寄り添う出来となっていました。
さらに次の生産地であるヴァーグラムはレス(黄土)土壌が非常に厚い特殊な土壌で、オーストリア全体の中でも特有の風味が広がります。
アルプスの山々が風化してできた黄土が風に吹かれてこの地に降り注ぎ、堆積しました。
レス土壌はワインに核果実やトロピカルフルーツの風味など豊かな果実味を与え、ミネラルも堆積土壌特有の口に広がる華やかな雰囲気になります。
フリッチ(Fritsch)はこの地を代表する造り手で、ビオでとてもきれいなワインを造ります。
今回お出ししたものはヴァーグラムのその風味を如実に表した正に代表する味わい。ヴァインフィアテルのそれとはこれほど風味が違うのかと驚かれているお客様もいらっしゃいました。
最後に、ニーダーエスタライヒ州を代表する銘醸地ヴァッハウDACから、マッハヘルンドゥル(Machherndl)の単一畑Kollmützのグリューナーをお出ししました。
ヴァッハウはヴィネアヴァッハウというアルコール度で規定された独自の品質基準を作り、他の生産地と一線を画していた銘醸地です。
その中で若手の生産者であるマッハヘルンドゥルは、ヴィネアヴァッハウに属するものの、自分なりの哲学でワインを造っています。
2016年に私も訪問させて頂いたのですが、非常にスタイリッシュで綺麗なテイスティングルームで、畑ごとに作り分けてテロワールを表現したワインを出して頂きました。
ヴァッハウなのにこんなに柔らかいワインがあるのかと驚いたのを覚えています。当主曰く、アルコール度を追い求めるのではなく、その畑の特性を表現するワインを造りたいという哲学がよく表現されていると感じました。
今回お出ししたKollmützのグリューナーも熟した柑橘の風味、硬質なミネラル感というヴァッハウの典型の味わいを示しつつ、うま味や柔らかな酒質はこの人らしいセンスの良さを感じました。
グリューナー・ヴェルトリーナーはそれぞれのテロワールを非常によく表現するワインで、オーストリアの良質な造り手がその土地の典型を表すのに適したブドウ品種であると感じて頂けたかと思います。
比較することで、それぞれの土地の土壌、気候、斜面、天候などよく表現されていることがお分かりいただけたのではないかと思います。
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